11/19-12/24 川尾朋子展「呼呼応応」

2011.12.23

川尾朋子展「呼呼応応」を開催いたします!!
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会期:2011年11月19日(土)- 12月24日 (土)
オープニングレセプション 11月19日(土) 17:00 -19:00
会場:SATOSHI KOYAMA GALLERY
〒103-0023 中央区日本橋本町3-2-12 新みやこビル501
東京メトロ銀座線三越前駅 A10出口より徒歩3分
JR総武線新日本橋駅 徒歩2分
JR山手線神田駅 徒歩7分
開廊日時、ご確認ください!
open 水18:30-21:00 木・金・土12:00-19:00 close 月・火・祝 (日曜は予約制)
川尾朋子展「呼呼応応」
空中での筆の軌跡が縦横無尽に広がり展示空間を埋め尽くす。
そこにある「呼応」の「呼」の点。それはどこに向かい、どのような軌跡をたどるのか。
 留まることなく展開を続ける川尾朋子の「呼応」シリーズの最新作となる本展では、幅3メートルを超える大作2点を含め、6点を展示する。
■個展解説
 本展を開催するにあたって、私は強い”信念”を持っている。それを支えるキーワードを、いくつか述べさせて頂きたい。
[①Simplicity, universality / 川尾朋子の仕事はシンプルである。]
点を打ち込み、放つ、それを受けるかたちで再び着地する。放たれた点は時に素早く、時にゆったりと、次に着地するべく点へと運ばれる。その繰り返しで画面が埋められていく。その結果、画面に定着するのは、点と線、それに空中での動きによって、時折垂れ落ちた滴のみであり、そこにシンプルでリアルな美しさがある。こういったスタイルは、一見アメリカ現代美術における抽象表現主義の習作と捉えられがちであるが、単なる行為そのものの主張ではない。そこには”書”というジャンルに身を置いて活動している、川尾のアイデンティティそのものが放出され、定着しているのである。
いわゆる書作品の鑑賞法として、書を嗜む者が当たり前のように行うのが「追体験」である。線を引くスピード、跳ね上げるタイミング、次の形状へ移る時のリズムなどを、その作品の前に立ち、辿っていく事によって、観る側と書き手との同調や差異の妙を味わう事ができる。勿論、油彩画や写真作品でもある程度制作プロセスを想像して楽しむ事は可能であるが、事後編集を行わない、Single-layeredな技法(川尾の言葉を借りると、「一発勝負性」)である故に、その追体験の密度がはるかに高い。川尾朋子の作品の魅力は、観る側と作り手とが繋がる事に、鑑賞者を選ばない普遍性(Universality)にある。
[②Identity color / 川尾朋子の”黒”は必然である。]
彼女がモノクロームに拘る理由は、幼少より長く関わってきた伝統芸術、”書”における美意識が深く関連する事は言うまでもない。そして、その墨の美を追求する事は、前述した、彼女のアイデンティティの放出に他ならない。藤田嗣治の白、イヴ・クラインの青などと同様に、川尾の黒は、作品にとって重要なファクターである。故に、墨の調合を探求する事は、アイデンティティの追求と同義なのである。
[③Correlation / 「呼応」]
前述に加え、川尾が近年ライフワークとしているテーマが、「呼応」である。2009年の福岡での公開制作は、和室を隔てた二枚の襖戸に、始点と着地点を打ち込み、その後襖戸を開け、観客が点と点の間を通るといった試みを行った。また、地元京都での個展では、ギャラリー自体を真っ黒な空間に仕立て上げ、点を打ち込んだ対となるパネル作品を、天井から幾重にも吊り下げ、その点と点の間を、鑑賞者の導線とする演出を行っている。共通して言える事は、彼女の打ち込む点、そして点と点を結ぶ、目には観えない感覚を共有する事、自身が日本人として大切にしている “行間を読む”つまり、”察する”というコミュニケーションが、すべての作品の根底にある。
川尾朋子が掲げるテーマ「呼応」。その作品と活動の先には、日本の芸術、或いは墨を使った、伝統的な作業に裏打ちされた、「狭くて深い芸術」としての観念から、グローバルなコミュニケーション・コンセプトへと羽ばたく姿がある。その可能性に、私の期待は膨らむばかりである。
2011年9月 小山 聰