2020.05.22
日本では緊急事態宣言が徐々に解除されていく中で、まだおられる感染者の方の治療や、数ヶ月にわたり緊張状態の中で働いておられる医療従事者の方々、本当にありがとうございます。
この期間にあらためて「醫戒」を読みました。
この本は、1836年ドイツ人医師C・W フーヘランドが医師の心得を記した本で、江戸時代末期に杉田玄白の孫、杉田成卿が翻訳したものです。(「醫」は、現代の「医」、翻訳者の杉田成卿が訳したときのそのままの字体で題字を書かせていただきました。)
1972年に言語史研究者の杉本つとむさんにより現代語訳・解説されたものを、医師の間で隠れた名著であり今後数百年にわたり読み継がれていく可能性のある本だということで、2016年に遵義堂から復刊されました。序文は聖路加国際病院の日野原重明先生が書かれています。
前置きが長くなりましたが、内容が本当に素晴らしいので、断片的ですが紹介したいと思います。
《病んでる人を見て、これを救おうと願う情意ーこれがとりもなおさず、医術というものの起因でございます。》
《医師は、人のためにこの世に生を得ているのでございまして、おのれ一個人のためではございません。》
《目的とは何でございましょうか。それはほかでもございません。他人の生命と健康をひたすら救済し、まったからしめるという道、これだけでございます》
《医師はその術を行うにあたっては、ただ〈病者〉の病気のみをみるだけにしなさい。決して患者の貧富とか大小(貴と賤)とかを問題にしてはなりません》
《医師というものは、ただ一般的に治療するのみでなく、不治といわれる疾病にあたっても、患者の生命を保全し、その苦痛をやわらげるということが職務であり、一つの功績でございます》
幕末の西欧医学思想とサブタイトルにありますが、200年近く前のこのような思想が、様々な言語で翻訳され、世界中の医師の方々に読まれたそうです。その精神が少なからず現代にも受け継がれているのではないかと思いました。
5/21には、新型コロナウイルスによる感染者数は累計500万人を超え、WHOによると過去24時間での増加数は10万人超と過去最多を記録し、欧米で勢いが鈍化する中、中南米で深刻化しているそうです。
今この瞬間も、最前線で闘っておられる世界中の医療従事者の方々に敬意を表し、心から御礼申し上げると共に、一刻も早い収束を願っています。
※遵義堂は、書店販売はされてませんが、読者直販にて出版業を行っているそうです。
お問い合わせmorinori1905-publisher@yahoo.co.jp
ISBN 978-4-9908726-2-5 C1047